花の帰する場所 3「痛苦」

とある街の豪華な屋敷。部屋の一室。
男性二人が主から命令を受けている。

「任務遂行は絶対。失敗すれば貴方達が始末される側になる事をお忘れなく」

「はっ、必ずや」




翌日。
桃花は皓の草庵に薬を貰いにやってきていた。

「水緑様いらっしゃるかな…楽しみだな」


その頃水緑は草庵を掃除しながら桃花が来るのを待っていた。皓が突然材料を採取しに行くと言い出かけてしまったのだ。皓なりの気遣いだろうか。 前回の事があってから皓は人が変わったように優しく接してくれるようになった。

「そんなに信用ならなかったのかな…」

繊細な問題だから見極めるまで仕方がないかと自分を励ましつつ掃除を再開する。しかし

いつも来るという時間を過ぎても桃花はやってこない。

「どうしたのだろう?今日は来ないのかな」

山を下り始めた。基本一本道だし迷うことは無いと思うのだが。自分よりも通い慣れている道の筈だ。



運命というものは残酷だ。
2人が出会った事が運命だとするならばこの苦難の道もまた運命なのだろうか。
劉皓ですら予見できなかったこれから始まる悲劇に抗う事は出来るのか。



桃花は山賊と思しき二人組に遭遇していた。今まで一度も見かけた事がなく油断していた。だが少し様子がおかしい。

「あ あの私…金品なんて持ってないんです」

「…」

山賊二人は黙ってこちらを見ている。

「助けて下さい…」

一人が合図をすると襲いかかり桃花を羽交い締めにした。

「きゃっ!?いや 離して!!」

刃物を取り出した山賊は腕を振り上げた。

「あんまり暴れないでくれ。余計な傷を付けるとお叱りを受けるんでな」

「何…何の事?!やめて



突然の叫び声。鳥が一斉に飛び立ち騒然とする。
間違いない、今の声は

「桃花!?」

水緑は走り出した。胸騒ぎが止まらない。


目に入ってきたものはうつ伏せに倒れた桃花と血溜まりだった。

「桃花ーー!!!」

駆け寄り、抱き起こすと下腹部が真っ赤に染まっている。
桃花はあまりの恐怖と痛みにガクガクと震えていたが呼びかけに反応する事なくそのまま気絶した。

「桃花しっかりしろ!!今手当してやるからな!!」


草庵に運び込み寝かせると傷口を確認する為に服を脱がせた。

「うっ…!これは」

刃物で滅多刺しにされていたのは男性器。傷口から出血が止まらない。

「落ち着け…落ち着け まずは止血しなければ」

包帯で根本をキツく縛るとあまりの激痛に桃花が覚醒し跳ね上がる。

「っあ!?っく…うぅ」

「桃花落ち着いて!今止血をしているから痛いだろうが耐えてくれ!!」

そこへ皓が駆けつけた。

「桃花!!桃花ぁ!!!」

「師傅!?」

「水緑、傷口はどこだ!?」

「ここです、今止血の為に根本を縛ったところです」

「なんて事を…桃花すまんな、わしが居ながらこんな事に…」

皓は大粒の涙を零し手を握りしめた。

「水緑!手術の準備じゃ!!」

「はい!!」



こんな草庵にそんな設備があるのかと疑ったが、皓は奥から色々器具を運んでくる。水緑はお湯を大量に沸かす準備をする為に外に出た。

「これを飲みなさい、少し眠くなるが心配は要らん。絶対助けてやるからな」

何とか薬湯を飲み、ゆっくり頷くと目を閉じた
それを確認すると皓は両手をかざし念じる。すると不思議な事に先程まで苦しんでいた桃花の表情が和らぎ呼吸が落ち着いてきた。

(術で痛みは抑えた。今のうちに傷口を塞がねば…)



「師傅!器具の処理終わりました!桃花は…寝てる?!」

「特別な薬を使ったんじゃ。今は痛みを感じなくなっておる。しかしこれはどういう事じゃ…何故ここだけ傷だらけなんじゃ…」

確かにおかしい。荷物や金品を奪う訳でもなく、刺す場所が性器だけなんて。桃花が暴れた為か周囲にも多少の傷はあるが明らかに狙って刺している。 あまりの傷の酷さに水緑は吐気を催す。

「うっ… 師傅、どうしますか」

「…致し方あるまい。丸ごと切断する。これを全部縫合して元通りにするのは困難じゃ。わしはこちらの専門ではないから昔ながらのやり方になるが」

「切り落とすなんてそんな…!」

「いずれ腐って毒が全身に回ってしまう。この子の為じゃ。お主も辛いじゃろうがよく見ておきなさい。それと手を握ってあげなさい」

「はい…師傅、お願いします」



こうして性器を切断し、縫合すると尿道が塞がらないように栓をした。

「この薬を塗って…布でしっかりと巻くんじゃ」

「はい!」

手術が終わると流石の皓も堪えたのかよろけて倒れた。

「師傅!しっかり!」

「わしは大丈夫じゃ…それよりお主、処置が済んだらこの事を桃花の両親に」

「はい、今すぐに!」


4へ続く


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最終更新日 2020年6月9日
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