かなしいかぜ 1


「あと一ヶ月か…」

もう少しでこの場所には立てなくなる。私の処理が決まったから。

もちろん不当な理由ではない。法律に基づいた事で誰も逆らえない。
自分達工業用ロボットの避けられない運命…


「何故です?私はまだ働けます!どこも故障なんてしていません」

つい声を荒げてしまった自分。だって、ずっとこの場所でみんなの為に仕事が出来ると思っていたから。

「だからだよトルネードマン。君の仕事はミスが許されない仕事だ。 だからこそ、定期的に新しく、より性能の上がったロボットやシステムに変えていかなくちゃいけない。 君が頑張ってくれている事はみんな知っているし、感謝もしている。だけど、法律での決まりなんだ。 これには私も逆らえないんだよ…できれば君とこれからも一緒に仕事をしていきたかった」

モニターに映る右手に握り締めているのはおそらく自分の処理を通知する書類だろう。

「あ…」

どうしたら良いのか分からなくなった自分は思わずその場を飛び出した。

「何故だ…何故だ!私は一生懸命働いた!この仕事に誇りをもっていたから!みんなの事が大好きだから!」

理由を理解出来ないわけじゃない。でも…


その後、自分の後を引き継ぐロボットが施設に配属され、仕事の流れを覚えていた。彼に手解きをする時に冷静に務めるのが精一杯で、自身はどこかうわの空だった。

そんな時だ。あの男に会ったのは。



深夜、アラームが鳴り出した。

「警告 警告 気象レーダーが初期の竜巻を感知しました 直ちに現場に急行してください」

準備を始めるが少し違和感を感じた。今日の海や天気の様子を見ていた限り竜巻が起こるような様子が一つも無かったからだ。

(システムの誤作動か?)

現場に赴くと案の定竜巻などどこにも感知出来ず。

「なんだアレは…?」

円盤型の飛行体が浮遊している。徐々にこちらに近づいてくる。

「あの飛行体から発せられる風が誤作動の正体か!」

自身は戦闘用ではないが、このトルネード発生装置で迎撃する事は出来る。しかし中に乗っているのはどうやら人のようだ。たとえ悪人であっても人は決して傷つけてはならない。

「お主がトルネードマンか」

「誰だお前は!」

カプセルが開くとそこには白衣に身を包んだ初老の男性が。

「お主の力を見てみたくてな」

ニヤリと笑うその男は小型ロボットをこちらに向けて飛ばした。体当たりをかわし体勢を立て直すと腕を構える。

「くらえっ!」

腕から強力な小型トルネードを発生させあっという間に粉砕してみせた。男は笑いながら拍手をしている。

「さすがは自然災害対策ロボット、戦闘用ではないがすごいパワーじゃ。いずれまた会おう」

そう言うとカプセルを閉じ飛んでいってしまった。

「何だったんだ?また会おうって…」

一方的に会う約束をさせられたもののその後は特に何もなく、任期を満了した自分はスクラップ工場へ運ばれた。この時の事はあまりよく覚えていない。 エネルギーを抜かれ、指一本動かせない状態だった。ここへくると扱いもぞんざいで、他に処分を待っているロボット達と共に無造作に放って置かれた。

(……)

ほんの少し残っていたエネルギーも切れ、自分はゆっくりと目を閉じた。


2へ続く


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最終更新日 2015年3月18日
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