風は蒼き光と共に 1


今日はとても大事な日です。
僕の新しいパートナーとなる子が誕生した日です。
早いものでもう一年が経ちました。

僕は戦う事を辞め、武力ではなく平和的に解決して行く事を選び自分のパーツを提供しました。そして僕のDNAデータを使って4体のレプリロイドの製作が始まり、月日が流れていきました。

自分の兄弟のような、子供のような…いわば家族が増えるようでとても楽しみにしていました。

そして1番初めに誕生した子ー




僕はその子を今日、特別な存在として迎える事にしました。

グリーンのカラーに大きな羽、スラリとした長身の彼。
僕とは全く違うタイプのその子。
本当に自分のデータが使われているのか疑ってしまうほど、魅力的で。

いけないと思いつつ、次第に彼に惹かれていきました。

そんな彼との大事な思い出を少し、話そうと思います。



「エックス様、無事に起動いたしました。引き続き動作確認テストを行います」

「うん、僕も付き添うよ。よろしく頼む」

起き上がり、こちらを向く彼。

「あなたは?」

澄んだ碧眼がこちらを見つめる。

「僕はエックス。生まれてきてくれてありがとう」

「…?」

「君の親に当たるレプリロイド、エックス様はこのネオ・アルカディアの創造主であり、1番の権力者であるんだ。失礼をしてはいけないよ」

「エックス…さま」

「起動テストが終了したらある程度のデータをインプットしてくれ。その後は僕が説明しよう」

「よろしいのですか?」

「うん、今日という日を待ちわびていたからね。早くこの子と話がしたいんだ」



「エックス様、製造コードネームHですが…」

「名前だよね。この子の名前は"ハルピュイア"だよ」


「ハルピュイア…名前…」



彼はエックスを主に政治や学術的方面からサポートする為に一際高度なAIが搭載された。
ネオ・アルカディア第二位の権力者として、四天王のリーダーとしてこの国に従事する事が決まっているハルピュイア。

データのインプットが完了すると、エックスが迎えに来た。

「ハルピュイア」

「はい」

「ちょっと気分が悪そうだね?大丈夫かい?」

「色んなデータが交錯していて…頭痛が」

「無理はしないで。落ち着くまで待っていよう」

いくら容量と処理能力が他のみんなよりあるからって程々にしてあげないと
と、データ管理者を軽く注意しているエックス。

もう平気ですと、顔を上げたハルピュイア。データの整理が済んだようだ。

「エックス様……ネオ・アルカディアをお創りになられた創造主。かつてレプリロイドによる警察機構にイレギュラーハンターとして所属。 後にイレギュラー戦争、妖精戦争を平定した蒼き英雄。ソーラーパワーを装填、チャージする事により圧縮したエネルギー弾を撃ち出すエックスバスターが主武器…」

さすがだねと、微笑むとエックスは歩み寄り、ハルピュイアの隣に座る。

「戦争平定後、僕は戦う事を辞めた。このネオ・アルカディアを創立する事に力を注いでいた事もあるけど、破壊する事から新たに生まれる事なんて、更なる悲しみと憎しみだけだと気づいたからね…」

小さくため息をつくとさらに続けた。

「でもね…そう綺麗事では済まないのも分かっているんだよ。僕は戦わないと決めたけど、自分が弱いだけ…僕は現実から逃げているだけなんだ」

「エックス様…」


「ネオ・アルカディアを紹介するよ。ついて来て」

白を基調とした設備が並び、人もレプリロイドもなんの隔たりもなく生活している。街には笑顔が溢れ、なんとも幸せそうだ。

だが、直ぐに気付いた。
この都市がバリアによって守られた閉鎖的空間である事を。

「ハルピュイアのアイは高性能だからね、簡単に見つかってしまったな」

「その向こう…暗い世界が広がっているようですが」

頷くエックス。
地球は度重なる戦争で殆どが荒廃し、人が住めなくなっていた。

「君は特殊な能力をたくさんもっている。その一つが天候操作だよ。乾燥した土地には雨を、寒波に覆われた土地には暖かな光を…そうやって、人間達の生存圏の拡大をする事が君の大事な仕事の一つ」

詳細は後で説明させるよとその場を後にした。


2へ続く


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最終更新日 2015年2月25日
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