Wicked Life 2


ハルピュイアに怯え、どうしたら良いのか解らないコピーエックス。

彼の言う事を素直に聞けば自分は助かる。
しかし自由の二文字は自分の中から消え去ってしまう。

もとより自分に自由など存在しないのだろうが。



「さて、説明を続けましょうか」

投げ飛ばしておきながら、側に座ると手を差し伸べるハルピュイア。

「肝心の"エックス様"の事について説明をしていませんでしたね。さぁお手を」

仮にも君主であるという"エックス様"とやらのコピーである自分にこんな事をして…相当嫌われていたのだろうか。
殺気のようなものすら感じるのに、笑顔でいるハルピュイアの心が読めず彼に対する恐怖は増すばかり。

「どうなされました?俺も忙しいんです。あまり手間取らせ」


次の瞬間― コピーエックスは逃走を図った。

「悪い君主様だ…」



「誰か! 誰か助けて!!」

長い廊下を駆け抜けるが誰もいない。
重く冷たい空気に、更に恐怖心が煽られる。

なんなんだこの場所は。
なんて 居心地の悪い場所なんだ。

こんなところで絶望しながら過ごしていかなければならないのか?
"エックス"の代わりとして?自分という存在ではなく?


走っても走っても誰もいない。
誰も助けてくれない。

まるでこの先の自分の未来を暗示しているかのような


「まったく… 躾からしないといけませんか?」

「!?」

耳元で聞こえるハルピュイアの声。
暴れるコピーエックスを背後から締め上げると無駄だと分かったのか急に大人しくなった。

「俺から逃げられるとでも?」



「ころせ…」

「?」

「ボクを殺せ… オマエと一緒にいるくらいなら死んだほうがマシだ!!

「なっ…」

最愛の君主の姿が 一瞬脳裏を過ぎる。
彼は追い詰められて自分にこう言った「僕を殺してくれ」と


「こんなに辛い思いをするなら…死んで楽になった方がいい。ハッキリと自我が芽生えてしまったら怖くなる…今ならこの世界に未練もない」

『こんなに辛い思いをするなら…死んで楽になりたい。一緒に消滅してしまえばこの世界に災いが起こることは無くなる。この世界に未練がないと言えば嘘になるけど…』



「エックス 様…っ」

力が緩む。
コピーエックスは腕からするりと抜けるとその場に崩れ落ちた。



「ちょっと!何やってんのよハルピュイア!」

「放っておいたらこれだぜ。少しは自分の立場も考えろよな」

突然の声に顔を上げる。
そこにはレプリロイドが2体。


ファーブニルとレヴィアタンだった。

コピーエックスは身代わりとは言え、生まれながらにしてこの国一の権力を持っている。
こんな姿を見られてしまってはハルピュアと言えど大問題になってしまう。
エックスがコピーと掏り替わっていることを知っているのは幹部の中でも更に限られた人物だけである。

しかしこの2人、ハルピュイアを諭しにきたのかと思えばそうではないようだ…

「ほんっとアンタって子供よね。夢中になると歯止めが効かないんだから。リーダーがこんなんじゃ先が思いやられるわ」

「お前が"エックス様"を羽交い絞めにするとは驚いたなぁ〜。俺達以外の奴に見つかったらどうするつもりだったんだハルピュイア?」

「くっ…」

言い返せず口ごもるハルピュイア。
明らかに仲が悪い。


「エックス様、しっかりなさってください」

コピーエックスは支えられ立ち上がると、彼女は続けた。

「申し訳ありません、エックス様。私達から充分に注意しておきますから、どうぞお許しになってください」

「君は…?」

「私はネオ・アルカディア四天王の一人レヴィアタン。こっちの大きいのがファーブニルです」

ぺこりと頭を下げる彼女。

「そのご様子ですと、我ら四天王の事はまだ説明を受けてなさそうですね」

頷くコピーエックス。

「ハルピュイア、お前、あんな事してるヒマがあんならさっさとしろよな。お盛んなのは結構だがよ」

「黙れファーブニル…」


「ま 待って…」

見ているのが耐えられなくて思わず前に出たコピーエックス。


「ボクは平気…何もされてないから 大丈夫」

なんで…こんな奴の事庇ってるんだろう。


「でも今…」

「まだ上手く動けなくて転んだのを、彼が起こしてくれたんだ」

そんな事ある訳がないのに。

「そう ですか。では何かありましたら遠慮なく仰ってくださいね」


驚くハルピュイア。
コピーエックスはなんとか平常心を保ちレヴィアタンを突っぱねた。

「なんだ 面白くないの。行きましょファーブニル」

そんな彼女が漏らした一言は、コピーエックスに確実に不信感を抱かせるもので…

どいつもこいつもおかしい。狂った奴ばかりだ。
こいつらは仲間じゃないのか?
理解不能な事ばかりで思考回路が狂いそうだ。


「俺を 庇ったつもりか」

若干驚いた表情をしながらこちらを見るハルピュイア。


「違う。誰がオマエなんか庇うもんか。余計なことを言わなかっただけだ」

「ふん…」


小声でそっと耳打ちする。

「アイツらはただ面白がってるだけだ。お前の事なんか微塵も心配していない」

「ハルピュイア…?」

「行くぞ。説明を続ける」

警告という形で礼を言うハルピュイアにほんの少しだけ安心感が生まれる。
話を続けるところをみると自分は処分されずに済むようだ…


こうなってしまってはどうしようもないのでしばらく付き合ってみることにした。長い廊下を進みどんどん人気のない域に近づく2人。

(本当は良い奴なのかなハルピュイアって…)

この先、何が待ち受けているのだろう…
コピーエックスの心は常に不安で満たされていた。


3へ続く


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最終更新日 2015年2月25日
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