Wicked Life 7


「エックス様は確かにネオ・アルカディアの平和を望んでいた。 だがその為に罪もないレプリロイドの虐殺を考える様な事はしない! エックス様は人間とレプリロイドが手を取り合い、共に生活していけるようこの国をお創りになられたのだ!!」

「オリジナルと比べるな!ボクはオリジナルの完全なコピーなんだ。 ボクの意見はオリジナルの意見だ。従えないのかハルピュイア?!」


暫し沈黙が続いたが、ハルピュイアが折れた。

「…申し訳ありません。厚かましい真似をした事お許し下さい」

ニヤリと笑うコピーエックス。
戦闘用プログラムを発動することが出来るようになり、自信がついたコピーエックスは態度が豹変していった。


元々個体能力は高いので仕事も何不自由なくこなしていたが、その考え方や行動はオリジナルとは全く異なっていった。
自らこうなってしまったのか、周囲がこうしてしまったのか。

一部を戦闘用アーマーにフォームチェンジ。
身にまとっているローブも基本デザインは似ているとは言え、色も白に金色と明らかに自身を誇示していた。
そんなコピーエックスを周囲は変わったと言い、それを聞いては密かに笑んでいた。


「そのアタマで良く考えれば自ずと分かることだろう?エネルゲン水晶に取って代わる資源もない。 そうなれば無駄に消費している分を減らす事が最優先になる。 ハルピュイアは仕事も満足にできずネオ・アルカディアになんの利益も生まないゴミクズにエサをあげようと思うのか?」

「いえ…」

「そこまで分かっているなら口答えするんじゃない」


立場は完全に逆転していた。
そして、コピーエックスのハルピュイアへの対応は悪くなっていく一方だった。

あの頃の弱い自分はもういない。
オリジナルですら持っていなかった力を手に入れたんだ。

コイツは自分を道具として作らせたのだ。
そんな奴に従う道理はない。ボクは伝説の英雄エックスだ。

誰も自分には逆らえない
いや 逆らわせない…!!



「それより―

ハルピュイアに冷ややかな視線を送る。

「君の実力は四天王の中でも特に優秀であると聞いていたけど、それは誤った情報だったのかな? レジスタンスが拾ってきたオンボロレプリロイドにこうも簡単に負けてしまうとネオ・アルカディアの信用問題に関わると思うんだけど?」

「申し訳ありません…エックス様」

「ふふ まぁいい ゼロと会うのが楽しみだ」

レジスタンスの味方をしているゼロという紅きレプリロイドの存在。尽く防衛を突破され四天王達が止めに入るが全く歯が立たず。 だがコピーエックスはそれが楽しみでもあった。退屈な毎日に刺激をくれるゼロ。こちらの軍が壊滅との報を受けてはニタリとほほ笑み喜ぶのだった。 彼ならば自分の相手がつとまるかもしれない。

「エックス様!あの男は危険ですお一人でなど…!」


そして―


ゼロに破れ自爆したコピーエックス。意識は殆ど残っていなかった。

「ゼロを追え!やつを逃がすな!殺せ!!」

ハルピュイアの怒号が響き渡る。

室内は炎の海と化していた。壁や足場は崩れ立ち入る事は出来ない。あちこちに砕け散ったコピーエックスの欠片が見える。
レヴィアタンとファーブニルが制止したがハルピュイアはそのまま炎の中へ飛び込んでしまった。

「エックス様ぁぁぁああ!!!」

燃え盛る炎の奥にコピーエックスの頭部が壁にめり込み引っかかっている。両手で抱えると微かに反応した。

「は…はる ピュ  いア」

「エックス様!!お気を確かに!急ぎメンテナンスを…」

粉々になった状態でメンテナンスなどもう意味を成さぬのに。

「ボクが  いな く  なるのガ コワい か」

「何を仰って…エックス様にはこれからもこの国を…」

「コわ い ん  ダ  ロ」

「…」


拠り所がなくなる事が
コピーとは言え、最愛の君主と再び離れ離れになる事が。

恐ろしくてたまらない。


「そう…ダな  ボクの ウンメイ を クる わせた オリ ジ  ナル… ゼロ… そして ハ ルピュ イア… おまエたチのコトは」

「ゼッ た  イ に  ユル さな イ」







エックス様の為、ネオ・アルカディアの為と思い用意したコピーエックス。
彼が生み出したものは恐怖と絶望と破壊。
そして自分自身の心の傷をひどく抉っただけであった。
今更になって思う。自分は浅はかで愚かであったと。
本当に君主とネオ・アルカディアの事を思うのであれば、こんな事をするべきではなかった。

「エックス様…エックス様ぁ…」


ただ…自分がエックス様に会いたかっただけであったと。



WICKED LIFE END


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最終更新日 2015年2月25日
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