Twin Angel 1
復興を目指して行動していた四天王の3人は、ほとほと困り果てていた。
人間達はネオ・アルカディアに戻ろうとはしない。
バイルが消えたとは言え、安心ができない事。
肝心のエックスがいない事…
度重なる不祥事でネオ・アルカディアの信用は地に落ちてしまった。
残ったレプリロイドのみで復興をしても意味が無い。
ここは人間とレプリロイドが手を取り合って暮らす為の理想郷なのだから。
静かに横たわるエックスの亡骸を撫で、思いに耽るハルピュイア。現実逃避である。 ユグドラシルの鍵としては使えなくなった為に、ある一室に保管している。この部屋に毎日通っては今は亡き君主に思いを馳せる。
最近はサイバーエルフとなったエックスの存在も感じない。今頃どうしているのだろうか。
「エックス様…どうか… どうか この国に ネオ・アルカディアにお戻りになって下さい」
悲痛な叫びにゆっくりと目を覚ますエックス。
彼は力なくサイバー空間を漂っていた。側にはファントムがいる。
「如何なされました?」
「うん…ハルピュイアが 呼んでる」
「…」
「行かなきゃって 思うんだけど体が おもうように動かないんだ」
「ご無理をなさらず。エックス様は充分この世界のために尽くされました。ゆるりとお休みになられますよう」
「…でも 最近思うんだ みんなと過ごした あの頃が懐かしい」
「あの頃に、戻りたいな」
「ごめんね ハルピュイア」
そう一粒の涙をこぼし静かに瞳を閉じる。
エックスは本当に消滅しかけていた。ファントムが思わず目を伏せてしまうほどそれは痛々しく非情な光景であった。
彼も思うところがあったのだろう。
「あやつはいつまで経っても独り立ち出来ない」
「甘やかし過ぎ」
などとエックスを諌めた事すらあった。
こんな状況なのも知らずに、まだエックス様に力を貸せと言うのかハルピュイアよ。
彼は考えた。
どうするべき事がベストなのか。
果てしないこの空間を彷徨い、考えを巡らせる。
そして見つけた。
僅かな歪みから生まれた現実世界との境界。
ファントムは一瞬躊躇った。
勝手な事をして、エックス様を困らせはしないか。今からやろうとしている事が必ずしも良い方向に向うとは限らない。
「エックス様にご相談を…」
いや、話せば彼は私を止めるだろう。自分の考えを貫く、なかなか頑固なお方なのだ。
「エックス様、己の意志、貫く事 お許しを」
現の境から零れる光を握り締め、ファントムはその隙間から飛び出した。
その夜、ハルピュイアの元に一つのエルフが舞い降りる。
「この気配…まさかファントムか!?」
「久しぶりだなハルピュイア。ファーブニルとレヴィアタンも疲れきった様子であったが、お主は更に酷そうだ」
「放っておいてくれ…」
「エックス様にご無理を強いようとしておきながら、なんの手配も進んでおらぬ」
「な…なんだと…?どういう意味だ」
「エックス様に戻っていただくよう、呼んでいるのはお主であろう。だが…戻る器が無い」
視線の先には壊れたオリジナルのボディ。
「エックス様は!?エックス様は今どこに?俺の声が届いているだと?」
「うろたえるな。お主がそんな状態ではエックス様が悲しまれるぞ。お主はエックス様の側で何を聞き、何を見、何を感じ取ったのだ。情けない」
ピシャリとファントムに諌められハルピュイアはその場にガクリとひざを付く。反論する余裕もなくうなだれてしまった。
「エックス様は…もう、満足に動く事が出来ぬ。会話をする事すら精一杯だ」
「!? そ そんな…」
「しかし、毎日のように皆に…お主に会いたいと申しておる」
「エックス様が…俺に…」
「急げハルピュイア、手遅れになる前に。拙者はそれ迄にエックス様をなんとか説得する」
ファントムの言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。
「ファーブニル、レヴィアタン、及び幹部緊急招集だ!!」
「エックス様を…復活させる!!」
2へ続く
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最終更新日 2015年3月18日
SLOPPY GRAPHICA RIKU SAKUMA/REQ code:Anode
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