Twin Angel 2
その頃、サイバー空間では一つのエルフが偶然にもエックスの元に辿り着いていた。「ボクを呼んだのはお前か」
「来てくれたんだね…嬉しいよ」
コピーエックス。ネオ・アルカディア崩壊を招いた1人。バイルの策略により自爆して死亡してからはあてもなくサイバー空間を彷徨っていた。
「どうしても君とゆっくり話しがしたかったんだ」
「そうだな、ボクもお前たちには言いたい事がたくさんある」
「まずは謝罪させてくれないか…君というひとつの命を、僕のコピーとして誕生させてしまった事。辛い道を歩ませてしまった事、本当に申し訳ない事をした」
「謝って気が済んだか?」
「気持ちは本当だけど…言葉だけでは何とでも言える」
「分かってるじゃないか。ボクはお前たちを絶対に許さない…だが、エックス。どうやらキミだけは他のヤツらとは違うようだ。 先程まで荒んでいたココロが不思議と落ち着いてくる」
微笑むとエックスは話を始めた。
「君は本当はとても良い子。生まれた時からずっと見ていたんだよ。出来る事なら君とも同じ時を、平和な時を一緒に過ごしたかった。 そんな君の純粋な心を傷付けてしまったのは僕達、ネオ・アルカディアだ。君がレプリロイドの処分を始めた頃…あえて僕は口を出さなかった。 もう、この子を指導者としてこの国は動き始めている。僕が出ていっては更なる混乱を招くからね」
コピーエックスは黙って聞いている。
エックスの予想外の言葉に驚いているようだ。
「レプリロイドの不当な処分は決して行ってはいけない。行動としては間違いだったけど、判断としては間違ってはいないんだ。 極論だけど、それもネオ・アルカディアを救う一つの案なのだから。だから僕は君を責めない。 むしろ傾倒していたこの国を少しでも持ち直そうとしてくれた君には感謝の気持ちでいっぱいだ」
先程までの怒りは何処へ行ったのか、コピーエックスの顔は歪み、今にも泣き出しそうで…
「そんな事を言ったのは…お前が 初めてだ…」
エックスは彼を抱き寄せた。子供をあやすように優しく。
「本当は辛くて逃げ出したかったよね。周囲の都合で振り回され…でも何かあれば最終的な責任は自分に来てしまう。 君は周囲の重圧に耐え、本当によく尽くしてくれた…」
ありがとうと囁くと、彼は声をあげて泣き出した。
彼は認めて欲しかったのだ。
コピーとして生まれ、常にプレッシャーと戦い、時には怯え、誰にも頼れず常に孤独。何かあればオリジナルと比べられ、エックスに逆恨みをしていた。
暴君とまで囁かれ、彼の心は荒んでいった。
強がることでしか自分を保っていられなかったから。
「ボク ボクはっ… ボクなりに 頑張っ て でもよくわからない事だらけでっ っく オリジナルのように できない事が悔しくて 」
「うん、わかってる。だからこそ僕は君と会って話したかった。君は悪くないんだよって事を伝えたかった」
背中をさすり、落ち着かせる。
「僕は君に許してもらおうとは思っていない。僕たちは許しを請う前に反省しなければならない。そして償わなければならない。 でもこうなってしまった以上、僕が君にしてあげられる事はただ一つ。君が望むなら…だけど」
「何…?」
「僕の残された力を使って君を全く別のレプリロイドとして転生させる」
「そんな事…できるの?この空間からはそう簡単に抜け出すことは不可能だよ」
体を失った者が行き着くこの場所、現世の人々はサイバー空間と呼んでいる。死後の世界とでも言ったところか。現世とここは通常繋がってはおらず、自由に行き来する事は難しい。
エックスは現世の人々に協力するため何度か抜け出していたが、今やその力もない。時空の歪みを見つけ、通過する事は容易ではない。
「だから僕が君を外の世界へ押し出す。そして製造中のレプリロイドに宿らせる。僕はもうわずかしか力が残っていないから上手くいく保証はないけど…」
もし自分のためにその力を使えばエックスは目の前から消えてしまうだろう。
初めて優しい言葉をかけ、理解してくれたエックスが居なくなるのが怖くなった。
「イヤだ…」
「?」
「ボクは、このままで…エックスの姿のままでいい。新しくならなくてもいい!ボクはエックスのコピーである事を初めて嬉しいと感じた。 初めて、他人を信じてみようと思った。だからエックスの傍にいる!」
そう叫ぶと同時に彼から眩い光が放ちエックスを包み込んだ。
少しずつ力がみなぎってくるのが分かった。
「な…何を!?」
「つらそうだったからさ、ボクの力を少し分けてあげたんだ。少しは楽になった?」
「君って子は…本当に」
今度はエックスが泣きそうだった。
「お互い…泣き虫なところはそっくりだね」
見つめ合い笑う2人。2人に絆が生まれた瞬間だった。
3へ続く
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最終更新日 2017年2月13日
SLOPPY GRAPHICA RIKU SAKUMA/REQ code:Anode
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