Twin Angel 3

「ねぇ、エックス。代わりのお願いを聞いてくれる?」

「僕に出来る事ならなんでも」

「うん、ボクに名前をつけて欲しいんだ!そしたらボクはボクだっていう実感が持てるからさ」

「そうだね。何がいいかな…」

しばらく考え込んだエックスは、口を開いた。

「イクス…ってのはどうかな?」

「イクス?それどんな意味?」

「文字で書くと僕と同じXなんだけど読みは違うんだ。人間が考えた言葉は同じ文字でも発音が違ったり、意味が違ったりするんだよ。 君が僕と同じ姿を受け入れてくれたから。僕達は同じ姿、同じ性能の…そう、双子の様な存在だから」

「双子…」

「ちょっと安易かな?別な名前にしようか?」

「ううん! いい!いいよ!!エックスのコピーじゃなくて双子なんだねボク!」

「そう、元々僕のDNAデータから生まれた存在なんだから、人間で言えば肉親だよ。君は生まれた時から僕達と同じ存在なんだよ」

「そっかぁ…ボク、今日から"イクス"なんだ!こんなに嬉しい気持ちになったの初めて!エックスの…双子の弟だね!」

エックスに抱きつくイクス。その光景はとても幸せそうで…
少し前から戻ってきていたファントムはそっとその場を離れた。



「ファントム!」

エックスのコピー体、もといイクスはファントムに駆け寄った。

「これは"イクス"様。よくぞご無事で」

ファントムはエックスに対するそれと変わらず跪いて頭を下げた。

「ファントムはさすがだね、戻って来ているのに気がつくのに時間がかかったよ」

「御二人の時間の邪魔をしては と」

「じゃあ改めて紹介するね。彼はイクス。僕の双子の弟だよ。ファントムはきちんとこの子にも僕と遜色なく接してくれていたから、問題無さそうだね?」

「はっ。これからもこの御身を捧げる次第」


「ファントムは…信じても大丈夫?」

イクスは不安そうに見つめる。エックスという君主がいる今、彼らにとっては自分はもう不要な存在である。

「イクス様はエックス様の大事な弟君となられました。それにイクス様にお仕えを始めた時から拙者の忠義は変わりありませぬ」

そう言ってファントムは微笑んでイクスを見つめた。



さて、とファントムは改めて向き直り、エックスに告げる。

「エックス様、大事なお話が御座います。エックス様には再び現世へとお戻りになり、ネオ・アルカディアへと君臨、 再び人々を照らす光となり導いて下さるようお願い申し上げます」



「エックス…どうして戻らないの?ボディ修復してるんでしょ?」

頑固な君主は少し怒り気味に返答をした。

「どの面下げて戻ると言うんだ?今更僕が戻ったところで何が出来る?僕が怒るのが筋違いなのもわかる。 けれど、身勝手にも程があると思わないか?もちろんこの事実を知るものは四天王と極一部の幹部だけ…だけど、国民を裏切るのはもうたくさんだよ」

「でも…みんなエックスの事待ってるみたいだし…」

「そんな事が許されるのであれば、僕のボディが破壊されてダークエルフが放たれた後にでもそうすべきであっただろう?違うかい?ファントム」

「仰る通りに御座います。ですが、バイルの恐怖が去ったとは言え、人々は暗黒の世界に居るのと同様。先導する光を待ち望んでいるのも確か」

「だからって…それに今はイクスが力を分けてくれたからこうして居られるけど、これでボディに戻ったとして満足に動ける保証もないし。何より自分が納得出来ない」


やはり一筋縄ではいかないか…
と諦めてかけていた時、イクスが言った。

「エックス…戻ってあげて。なんならボクの全ての力を渡してもいい」

「何を言って!!ようやく分かり合えたのに!それは僕が許さない! …そうだ、さっきの罪滅ぼしじゃないけど。イクス、君も一緒に復活するなら考えよう」

「なんと…!」

「えっ!?ボクも!??」

エックスの案はイクスも一緒に蘇り、実質的な政治はエックスが行い、行動する時はイクスがエックスとして振る舞うと言うのだ。

「そういう理由にしないと納得出来ない者もいるだろうから、建前でいいんだ。無事に復活出来たら君は自分の道を歩んでもらって構わない」

「でも…ボク、嫌われてるからさ。修理してくれるヤツなんていないよ」

「じゃあ僕も君と一緒にここで過ごそう」

「エックス様…!お気持ちは理解できますが現実は厳しいかと」

「ファントム!君も見ていただろう?彼がどんな扱いを受け、こんな姿になったかを。もちろん彼のした事を世間は許さないだろう。 だが彼を追い詰めてそうさせてしまった元凶は僕達だ。彼に謝って済む問題じゃない。これじゃあまりにも可哀想じゃないか…」

ファントムが悪い訳ではないが、どうしようもない気持ちを吐き出さずにいられないのだろう。エックスの言っている事に間違いはない。 ネオ・アルカディアに酷い仕打ちを受け、それでもエックスの為に自身を犠牲にしようとしてくれている彼を1人残してなど行けない。
それに

「イクス、君のした事を償う機会もできる。僕がサポートするから一緒に復活してみんなに事情を全て話そう。そして不幸にしてしまった人々に誠意を見せよう」

「う…うん、そうだね。ボクきちんと言いたい事は言いたい、そして謝罪もする。エックスの言う事なら聞くよ」

「ごめんね、せっかく君は君として生きていけるチャンスだろうに」

「いいんだ。それがボクの本来あるべき姿だから。エックスに少しでも尽くしてあげたいから。その…アイツの事は嫌いだけど、エックスだって会いたいだろうし」

「イクス…」

「でもさ、その…知ってる人たちの間ではさ、ボクの事ちゃんとイクスとして区別してよ!?じゃないと名前つけてもらった意味が無いもの」


4へ続く


トップページ  >>  ロックマン  >>  Twin Angel 3




Pixivのマイページへ

ロックマンサーチ

最終更新日 2017年2月13日
SLOPPY GRAPHICA RIKU SAKUMA/REQ code:Anode