envious 4


「レヴィアタン様、オラージュです」

「どうぞ」

無人と化したエリアXの一室にはレヴィアタンが佇み、データ整理をしていた。
ゼロがレジスタンスに加入しネオ・アルカディアと本格的な戦闘が始まってからはどうしても疎かになっていた。

「アイツの処理能力ならもう少し早く終わるんでしょうけど」

モニターから顔を上げるとこちらに向き直る。

「ハルピュイアの様子は?」

「だいぶ落ち着きを取り戻しました。それで一度謹慎処分を解除していただけないかと」

オラージュの様子を見てレヴィアタンも察したのあろう。

「分かりました。では明日1日だけ謹慎処分を解除します。ただし、ネオ・アルカディアセントラルタワーの外に出る事、 エリアX、ユグドラシルへの立ち入りは許可しません」

「それで充分です。ありがとうございます」


翌日。ハルピュイアの謹慎処分が免除された。
エリアXに行って溜まっていた仕事の処理をしようかと思ったが、レヴィアタンが既に完了させたとの報告を受けた。
今回の戦闘で破壊された施設の修理状況を確認しようとすれば、今自分が居るセントラルタワーからの外出は許可されておらず、 状況確認にはファーブニルが見回って状況を報告して修繕計画を立てているという。

司法は八審官達がきちんと役割をこなしており、警備隊や軍団も統率されネオ・アルカディアの乱れはなく襲撃前の穏やかな日常に戻っていた。

「ネオ・アルカディアを統括しているこの俺がいなくとも問題はないのだな」

ハルピュイアは現実を知った。
エックス様や自分がおらずともネオ・アルカディアは正常に機能している。


あてもなく人気のないところをふらりと歩いていると遠くから職員達の話し声が聞こえてきた。

「エックス様、レジスタンスに襲われて大怪我されたんだってな。治療に相当時間がかかるそうじゃないか」

「ああ。四天王も歯が立たなかったってさ。ファントム様はお亡くなりになられたし、 ハルピュイア様もエックス様を守ろうとして怪我したって言うじゃないか。今自室で療養中だって」

だけどさ…と1人がボソリと言う。

「エックス様やハルピュイア様、数年前から変わったって言うか…不謹慎だけど落ち着いたから正直ほっとしててさ」

「馬鹿!そんな事聞かれたらお前冗談抜きでスクラップだぞ!!」

「分かってるけどお前もそう思うだろ?あんなに仲良かったはずなのにいつからか溝が出来たような…エックス様の性格もキツくなってきたし、 なんだか本物のエックス様じゃないような気がして。このままだとネオ・アルカディアが崩壊するんじゃないかって心配してて…」

「いい加減にしろって。行くぞ」


ハルピュイアは黙り込むしか無かった。
普段の自分なら今の2人を不敬罪として処罰していたところだ。だが彼らの言っている事はおそらくネオ・アルカディアの人々全員が感じていただろう。

『この国を潰す気か』

ファントムの言葉を思い出す。

「お前の言葉通り、潰れかけたよ。俺がネオ・アルカディアをおかしくさせてしまった。お前が命がけで守ったエックス様も亡くなった。 だが本当に悲しんでいる奴は果たしているのだろうか」

「俺ですら 悲しいとは思わない。 …すまない」



窓にうなだれると見慣れた光景が目に入る。

「…平和の大樹」

大庭園の中央にそびえる貴重な生身の樹。エックスが平和の象徴として大切にしていた。
外への任務の際、いつも大樹の側で帰りを待っていてくれた。エックスがユグドラシルに封印されてからは楽しかった思い出が逆に辛くなり、近付こうともしなかった。


何か、発光体が見える。
ハルピュイアは驚き窓越しに凝視しているとそれは見覚えのある姿に変わっていく。
それは紛れもなく自分の一番大切な愛して止まない人。

「エックス様…?!」

ハルピュイアは庭園へ通じるゲートへ走った が、

「っく…」

暴走しないようにエネルギーは最低限しかチャージされていない。息も絶え絶えにやっとたどり着いたが当然通してはくれない。

「今すぐ ゲートを開けろ… エックス様が庭園に…」

「出来ません」

「俺の命令が…聞けないのか」

「ハルピュイア様のご命令でも出来ません。セントラルタワー外には出すなとの指示を受けております」

「貴様…っ」

ハルピュイアはそのまま膝から崩れ落ち倒れた。

「メンテナンスルーム、至急大庭園方面東ゲートW-01へ出動。ハルピュイア様が倒れた。おそらくエネルギー切れだと…


5へ続く


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最終更新日 2017年7月17日
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