Beautiful Dawn 前編
「2人共おめでとう!!」
その日、ガーディアンベース内は祝福ムードに包まれていた。
ヴァンのプロポーズがようやく実った為である。
お相手はガーディアン総司令官のプレリー。
4年前からずっと互いの事を想っていた。ハッキリと想いを伝える事ができないまま月日は流れていったが、そんな2人を後押ししたのはエールだった。
ヴァンもプレリーも同じ事を言う。
自分だけ幸せになるなんて出来ない と。
だがエールは言った。
遠慮なんてするな 実らぬ恋は自分だけにして欲しい
せめて相手がいる弟には幸せになって欲しい。
そして彼女の事を守ってあげて欲しい。
自分が昔、そうしてもらったように…
強がりでもなんでもない。
あの時から4年。
自分も成長し、受け止めることが出来た運命。
エールは一歩下がって2人を見つめている。
幸せそうな2人を見ると、そっとその場を後にした。
甲板にくると大きく背伸びをし、ちょっと強めの風を感じる。
不意にモデルXが顔を出した。
『心地良い風だね』
「そうね」
「そう言えば、モデルXって甲板にくると顔出すよね。何かあるの?息抜きとか?」
ちょっとくすりと笑うとモデルXに向き直る。
『…』
黙ってしまった。どうやら気に障る事を言ってしまったようだ。
「え…ごめん。なんか悪い事言っちゃった?」
『…彼を 感じたいんだ』
「彼…?」
はて。モデルXの言う"彼"とは一体。
『僕はいつもの場所で彼が帰ってくるのを待っていた。風が吹き抜けると分かるんだ。今日も無事に僕の元へ帰ってきてくれた。その時ほど嬉しくて安心できる事は無かった。僕の大事な時間だったんだ』
「だから風を感じていたいんだ?ふーん…」
モデルXの大切な人は風使いなのか…
風と言えばモデルH…今頃どこにいるのだろうか。
モデルHと言えばあの時…
『俺の愛するお方は皆を守る為自分の身を犠牲にし、俺の前から居なくなってしまった』
『後に…再会する事が出来たよ。気持ちは確かなものだった』
モデルXの言う彼って…
「モデルHの事?」
『…』
再び黙りこむモデルX。どうやら図星のようである。
エールはニヤけるとモデルXをいじりはじめた。
「あなた達って昔はレプリロイドだったんだよね?その時の話なんでしょ?モデルHって昔どんな姿だったのよ!?私達がロックオンした時みたいに緑色の風のロックマンだったの?」
『エール…恥ずかしいよ…』
「あなた男でしょ!何が恥ずかしいよまったく」
『う…えっと そうだな 適合者の雰囲気は似てたね』
「あんなきっつい感じだったのモデルHって。確かにモデルHもちょっとツンとしてるお澄ましさんよね」
『飛び抜けて高度なAIをもっていたから、そういう雰囲気はあったかもしれない。でもとても優しいんだよ。礼儀正しいし、周囲に気配りはできるし、曲がったことが大嫌いで…』
「やーだ〜惚気てる!モデルXってそういうトコ可愛いよね」
『違うよ!そうじゃなくて…』
モデルXは慌てているのか点滅している。レプリロイドの状態であったのならどんな仕草をしていたのか容易に想像できてしまう。
『ああ、モデルZの適合者は、昔の彼にそっくりだった。金色の長い髪とか。性格はあまり似てないけどね…皆を守ろうとする意志は変わらなかったよ』
「モデルZって金髪ロン毛のイケメンだったんだ…」
『そ そんな言い方…』
急にモデルZと彼の話題を振られた事で、モデルXとモデルHが両想いだった事や共に男性であった事など吹っ飛んでしまっていた。
「あっ!話すり替えたわね!?」
逃げまわるモデルXを追い掛け回していると、ふと何かを感じ取り辺りを見回す。
この懐かしい感じ…なんだろう。モデルXも気づいたようでこちらを向く。
『サイバーエルフが近くにいるね』
「うん…なんだろ、私を呼んでる」
(エール…)
聞き覚えのある声にハッとする。
この声は忘れもしない 大切な彼。
「ジルウェ!ジルウェなのね!?」
(エール 久しぶりだね)
その声と共にどこからともなく一つの光が舞い降りた。エールは慌ててバイザーをかける。みるみるうちに人の姿を成していくその光。金色の長い髪がなびく。
「う…嘘でしょ…?!」
『モデルXにそんな事しちゃダメだろエール。君ももう18だろ?相変わらずだなぁ』
そこには…ジルウェが笑顔を見せながら佇んでいる。
『子供扱いしたらまた怒られちゃうかな?とても素敵な女性になったね。驚いたよ』
「や… そんな なんで ??!」
あまりの事に驚きすぎて会話ができない。
代わりにモデルXが間を取り持つ。
『モデルZ適合者…ジルウェ 今まで存在を感じ取る事が出来なかったけど、無事だったんだね』
『久しぶり、モデルX。無事と言うか…消滅は免れたみたいだよ。今日はプレリーと大事な弟分のおめでたい日だからね、頑張って出てきたんだ。自分はただのレプリロイドだから…自由に空間を行き来できなくて時間かかっちゃったけど』
はははと笑うとエールに向き直る。
『と言うか本当は何度か出てきたんだけど、いざとなったら会う勇気が出なくて…それに』
『エールが自分を頼りにしてくれてた事が凄く嬉しかった分、出て行ったら拍子抜けしちゃうかな とか』
エールは震えている。
『エール…やっぱり怒って…』
「ジルウェのバカ!!!」
後半に続く
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最終更新日 2015年2月25日
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