Qualia 2
衝撃音を聞き付けた住人らが通報したのか警備隊のサイレンが聞こえてくる。街中であれだけ暴れては嫌でも目についてしまう。プロメテの放った一撃は建物を酷くえぐってしまっていた。
裏路地に入り人気の無い場所に移動してくると、転送の準備を始める。
「待て!一つ聞かせて欲しい」
「何だ。早くしろ」
「何故 私を選んだ?」
「さぁな。俺が選んだワケじゃないからな。ただ生まれた時からもう運命の歯車は回っていた…。オマエのお守りは他のやつらより楽だったがな。そう言う点では優秀だったが」
「お守り?何の事だ」
プロメテはフンと笑い飛ばすと
「先日も巨大なメカニロイドに襲われたな。皆自分の事でいっぱいで誰もオマエを助けてくれなかった」
「?! 貴様…何故その事を!!」
ヘリオスは驚いてプロメテに掴みかかる。
「クックックッ…でもお前は生きている。それは何故だ?良く考えてみろ」
「何…だと」
つい最近の事。この街にも大量のイレギュラーが押し寄せてきた。
不意に襲われたヘリオスは取り残され巨大なメカニロイドに襲われた。もうダメかと思った時そのメカニロイドは何故か真っ二つになりヘリオスは助かったのだった。
一瞬垣間見えたその人物…まさか
「まさか…そんなはずは」
「オマエが気付いていないだけで、全部処分してやってたんだ。誰のおかげで今日まで生き延びて来れたと思ってるんだよ。少しは感謝して欲しいもんだ。」
(さっきの攻撃も見せかけで最初から当てる気なんてなかったのか…!!)
ヘリオスは悔しさで唇を噛みしめた。しかし今はどうしようもない。
足元にも及ばない自分は黙って従うしか無いようだ。
「そろそろ行きましょう…警備隊が来るわ」
パンドラに急かされ3人はその場を後にした。
長かった一日ももうすぐ終わる。
聞きなれない座標地にある古めいた研究所の入り口にて、ヘリオスは今日あった出来事を思い起こしていた。あのプロメテと言う奴はここ最近ずっと自分の事を監視していたらしい。 いや、認めたくはないが”助けられていた”のか。
セルパンカンパニー本社の爆発事件の日を堺に自分の周りでやけにイレギュラー発生の報を聞く。自分に直接被害がなかった事もあり警戒を怠っていたのは事実。 だからこそ早くイレギュラー討伐への意欲を燃やしていたところであったのに。
「おい!何をボーっとしてんだ」
プロメテに呼ばれ踵を返すと黙って彼らの方へ向かって歩き出した。
負の感情に飲まれ勢いで付いてきてしまったが、果たして自分はこれから何をされるのだろう。彼らが言うチカラとは一体?ロックマンとは?
(力を得る権利が私にはある…ロックマンとしての力、世界を支配する力…)
「この部屋で待っていろ」
そう言い残しプロメテとパンドラは別の部屋に消えていった。
薄汚い部屋だ。
めぼしい物は何も無く、照明が弱々しく輝いている。
いや…奥に誰か 人影のようなものが見える。
「オイ…誰かいるのか?」
その影が動く。ヒトだ。
「…お兄さんも適合者?」
暗闇から姿を現したのは清楚な顔立ちの少年であった。澄んだ大きな青い瞳がとても印象的だ。
「お兄さん、服ボロボロだね?アイツらとケンカでもしたのかい?」
「ぁ…」
「ボクはテティス。ベイサイドエリア出身のレプリロイドだよ。お兄さんは?」
「名は……ヘリオス」
「そうなんだ。ヨロシクねヘリオス」
テティスと名乗った少年はにこっと微笑んだ。
ヘリオスは言葉に詰まってしまった。
物騒な奴らばかりがいるものだと思っていたヘリオスは拍子抜けしてしまった。
「ここに連れてこられたって事はヘリオスも適合者だからでしょ?」
「ねぇ、ヘリオスはどこ出身なの?ヒューマノイド?レプリロイド?」
「プロメテとパンドラ何やってるんだろうね。早く説明してくれないかな〜」
なんと無邪気な少年なのだろうか。
この状況下において微塵とも恐怖を感じていない。それどころか希望に満ち溢れている。
自分は怯えるだけで不安な感情ばかりが渦巻いていると言うのに。
「ヘリオス!」
「っ?!」
「っはは! 驚いたぁ?さっきからボーっとしてさぁ、考え事してるの?何考えてるのさ?」
「お前…この状況で何故そんなに陽気でいられる?この先何が起こるのかわからない…」
「ねぇ」
急に真剣な表情を見せる少年。キッとヘリオスの顔を睨むように見る。
「お前じゃなくて、テティスだってば」
「…失礼」
ふぅとため息をつくと少年は語りだした。
「ボクは力が欲しいんだ。その力を今から授けてもらえる。ボクはボクの夢を現実にするんだ。こんなにワクワクする事久しぶりなんだもん」
3へ続く
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最終更新日 2015年4月30日
SLOPPY GRAPHICA RIKU SAKUMA/REQ code:Anode
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